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国際NGO / NPO法人 ロシナンテス

北九州行きの井上様

先日、東京へ行って来ました。

その帰りは、連休の初日です。

朝8時15分の北九州行きのJALを予約していたのですが、
ちょっとした事情で、浜松町からのモノレールはギリギリの時間になってしまいました。

なんとか間に合うだろうと、ホッとしてモノレールで眠りこけてしまいました。

気がつけば、終点の羽田第2ターミナルでした。

よく見ると、第2ターミナルにはANA便しかありません。JALは第1ターミナルです。

ホームの真向かいに、浜松町行きのモノレールがありました。
これに乗れば、第1ターミナルに行けると思っていたら、無情にもドアが閉まり、
出発してしまいました。

もう次のモノレールを待っている時間はありません。

連絡バスを調べますが、待つ時間もなく、
連絡通路を全力疾走しました。
短距離走のスピードです。

連休初日でごった返す羽田空港の中を、大声を出しながら、長蛇の列を無視して、
なんとかゲートまで行きました。

しかし、無情にも飛行機のドアは閉まっていまいました。

その日は、北九州に帰った後、島根県の益田まで行かなければなりません。
なんとしてでも、帰らなければならないのです。

そして、キャンセル待ちの列に加わります。

次の北九州行きは、12時しかなく、北九州便と福岡便にキャンセル待ちをかけます。
福岡便は、50番でしたが、北九州行きは1番の札をもらいました。

しかしJALは、キャンセル待ちを3つに分類しており、私は一般客の分類で、
最低のグループです。

福岡便では、多くの上級グループ(特別のカードを持っているようです)の人たちに順番を抜かされていきます。

空港職員の人に聞いても、今日は連休初日でどうなるか分からないと言います。

スターフライヤーにも行きますが、最終便しかないと言われました。

3本ほどの福岡行きに乗れないときに、飛行機で行くのをあきらめ、新幹線で行こうかなとも考えますが、決心がつきません。

北九州便が1番なので、ここでダメなら、新幹線にしようと考えました。

そして北九州行きのキャンセル待ちカウンターへと行きます。
どうやら、私一人が待っているようで、もう上級グループから順番を抜かされることはありません。

これは、絶対に乗れるという自信が沸いてきました。

空港職員さんの横にへばりつき、様子をうかがいました。
しかし、無情にも、職員サンに言われたのは、予約の乗客が全てチェックインを済ませたというものでした。
私は、はずかしながらも、泣きそうになりました。

その姿に同情してくれた優しいグランドスチュワーデスさんは、
「ひょっとして、チェックインしたお客さんでも飛行機に乗れない場合がありますから、最後まであきらめないでください」
と私に言います。

私も誰かすっとぼけて、飛行機に乗らないことを祈ります。
実は、私自身もチェックインしたあとに飛行機に乗れなかったことがあります。

次々と乗客が飛行機に乗っていきます。

しかし、先ほどのグランドスチュワーデスさんの様子が変わってきました。

一人まだ乗っていない人がいるというのです。

彼女が叫びます。
「北九州行きの井上様、もうすぐ飛行機は出発します。出発ゲートに急いでくださ?い。」
何度も呼びかけます。

私は、「井上様、頼むから飛行機に乗り遅れてくれ?」
と祈ります。人の不幸を祈ることは、気が引けますが、一心に祈っていました。

井上様の姿はまだ見えません。

私は「ヤッター、これで乗れる」と思っていた瞬間、
遠くから井上様が走ってきます。
「すいませーん、井上です」

私は絶望感を覚えると同時に、「井上様、よかったですね」
と心の中でつぶやきました。

本当に気の毒そうな顔をしてくれたグランドスチュワーデスさんが、
次の便の様子を調べてくれました。

14時30分の飛行機には、何とか乗れそうだとのことです。

このことを聞いて、新幹線に乗らずにすむなと思いました。

そして井上様によかったと心の中につぶやいたからでしょうからか、
12時55分の福岡行きにキャンセル待ちで乗ることができました。

私は、しばらくの間、「井上様」という言葉が頭から離れませんでした。

川原尚行

更新日時: 2007年11月26日