5, '07
どこにある?
金曜日、僕と友人はヌバレスリングを見に行こうとしていた。
スーダン南部に広く住むヌバ民族の伝統文化の一つである。
ハルツーム郊外の広場で毎週金曜に行われているらしい。
会場の大まかな位置は知っている。
あとは目的地の近くに着いたら、その辺りにいる人に詳しく聞こう。
日没1時間前ごろに始まるというので、その頃に到着するようにハルツームの家を出た
そして残り数キロだろうと思う所でまでやってきた。
そこで僕らが道を尋ねたタクシーの運転手は
「ヌバレスリング?」と首をかしげたあと「ああ、あのことか」と独り納得して、
身振り手振りつきで道をおしえてくれた。
「いいか、この道をまーーーーーっすぐ進んで、
左に曲がるアスファルトにでくわしたら、そこを左に曲がって、
しばらくしたら右にまがるんだ」
教えてもらったように直線に車を走らせた。
やがて彼が言っていたとおり、左に曲がるアスファルトにぶつかった。
念のため近くに位置した商店の店員にも道を訪ねて確認することにした。
「こんにちは、レスリングが見たいんですが、ここを左に曲がればいいんですよね?」
そう聞いた僕に返ってきたのは自信のない言葉だった。
「レスリングか~、、、それはね、、、え~と、、、ここを右に入っていけばある、、、よ。」
右には未舗装路が伸びている。
2人の言っている事が違う。
正しいのは右か左か。
おそらくタクシー運転手の方が正しいのだろう。
けれども「右だよ」と教えてくれた人の目の前で左にシュッと曲がるのも失礼なので、
僕らはアスファルトではなく右手に伸びていく土の道を選んだ。
しかし、進めども進めども会場らしきものは見えない。
両脇に家が並ぶ乾燥した路地が続くだけだ。
陽の角度は刻一刻と下がっていく。
知らない場所でも道を教えてくれる。
間違っている事も多いけれど、
そんな暖かさがすきだ。
やはりあそこは左に行くべきだったのだろうと道を引き返し、
今度は先ほどの商店の軒先でマンゴーを食べていた青年に質問をした。
彼の答えも意表を突いた。
「とりあえずここを真っ直ぐ」
その手が指したのは僕らが最初に走って来た方向だった。
2択を1つに絞ろうとしたら、3択問題になった。
不安になった僕は「ヌバレスリングを見た事ある?」と青年に話を振り、
本当に道を知っているのか、失礼にならないようにさぐりを入れた。
僕の問いかけに対して「うん」と彼は満足げにうなずいて言った「あれはすごいよ」。
おお、そんなにすごいのか。それをここまで来て見逃すわけにはいかない。
僕らは青年を助手席にのせ再度出発した。
いそげ。夕日が沈む前に。
さわやかなナビゲーター(手は果汁でベトベトだが)は
迷いもなく、そこを左、ここを右、と案内していく。
その道はタクシーの運転手が示してくれたのとも、
商店の店員が教えてくれたのとも違う。
市場を過ぎ、アスファルトから未舗装路へと入る。
曲がる箇所がわかりにくいが、
次くるときの為に、いや、今夜帰るときのために道を覚えていく。
やがて会場らしきところに着いた。
車を降りたら人々の歓声が聞こえてきた。
直径50メートルほどの会場は、人の背丈の柵にぐるりと囲まれている。
柵には上から布がかぶせてあり、外から内側を覗く事はできない。
熱気と無事に到着した喜びの相乗効果で僕のボルテージは急激に上がる。
「じゃあ、そろそろ戻るよ」そう言って去ろうとする青年を引き止めて、
帰りの交通費に気持ちをのせた額を受け取ってもらった。
一人100SD(約60円)のチケットを購入して、
僕らはヌバレスリングを観戦することができたのであった。
荒井繁







すげえじゃん、ヌバレスリング!
おれもみてぇ。
でも2択が3択になるあたり、日本人だねぇ。
投稿者: KENPU | 2007年05月26日 23:21